新刊

『近現代日本語辞典選集』【モダン語辞典・事典・用語編】第3回配本 全3巻

明治・大正期・昭和前期に刊行された貴重な辞典類を選定・復刻。文学研究や歴史研究等のレファレンスに最有用な資料、第3弾。

著者 澤 正宏(福島大学名誉教授)
ジャンル 日本語
シリーズ 文学・言語研究資料シリーズ
出版年月日 2022/06/22
ISBN 9784910672069
判型・ページ数 B5・1800ページ
定価 99,000円(税込)
日本が近代から現代へ変貌していく時期直前の詩歌の動向が知られる資料、始まった現代の渦中に作家自体がいて、とりわけ労働運動、新芸術運動などの新しい社会の動きをどの程度理解していたかが分かる資料、日本のこの変貌期の最大の特色は15年間の戦時下におかれることだが、部分的ではあっても、弾圧される国民の側から、日本軍のアジア地域の侵略の実態が見える資料などを選んだ。大きな特色といえば、同じ外来語とはいえ、欧米からのそれとは対照をなす、『故事熟語大辭典』の全2巻にわたる復刻がある。

特 色

➀日本の近代文学、とりわけ明治30年代(1890年代末、一般に日本では浪漫主義が主流)末期の詩歌の動向が分かる『新詩辭典』を復刻する。本質的には短歌辞典であり、古典和歌以来の実に豊富な季節の言葉の収集に最大の特色が見られ、その言葉に沿った近代短歌の引用にも工夫、探索の跡が見られる。しかし、注目すべきはこの辞典が、コンセプトとして、西欧の近代浪漫主義を介し、短歌と詩とを接近させようとしていたことであり、こうした姿勢があったことを語っている資料でもある。

➁大正末期(1920年代中頃)から顕著になった、欧米の新しい芸術思想に影響されて興ったモダニズム系の文学と、左翼思想のもとに労働者が中心になって担った文学との確執は、昭和初年代末期(1930年代初め)には、両方の文学とも国家からの弾圧を受けて弱まっていく。そういう中で刊行された『新文学辭典』は、前者の文学の解説には弱点があるものの、後者の文学の解説には、同時代の文学の動向や、文学の認識などを知る上で貴重な内容があり、ここに復刻することとした。

➂昭和6(1931)年より15年間、日本はアジア・太平洋戦争に突入していく。日本軍がアジアの諸地域を侵略した際の、日本を含む各国の政治、経済、法律、思想、教育などが解説されている『大東亞時局語』は、国家による検閲があったとはいえ、日本の敗戦の1年半前の言論弾圧下で刊行されているだけに貴重である。ここでは戦争用語の解説や、軍隊の戦術、機械の生産などにも触れていているが、解説は植民地となったアジアの国々の地理、言語、宗教、民族などにも及んでおり、それらは戦後七七年の現在から見ても貴重なので復刻した。

➃『故事熟語大辭典』は、近代以前から事あるごとに使って来た、漢字による慣用語を網羅的に収集している。これは欧米から入ってきた外来語とは対照的な辞典になるのだが、立項数が全31742語(立項語には必ず意義と出典を付す)、挿絵の数が全361点という収録内容をみても、日本における故事熟語の1冊による集大成なのである。人気があって、過去に2度、異なる出版社で復刻されているが、ここに詳細な「解題」と解説とを付して改めて復刻することとした。
第9巻『新詩辭典』新詩會編纂(東京・參文舎、大阪・積文社發行所、明治39年5月5日發行)初版。
『新文藝辭典』菊池寛著(誠文堂發行所、昭和7年9月20日發行)。初版。
『大東亞時局語』朝日新聞社編(編集兼発行人・山本地榮、株式會社朝日新聞社發行所、昭和19年2月5日発行)初版。
第10巻、第11巻『故事熟語大辭典』(蘆洲)池田四郎次郎編著(東京寶文舘發行所、大正15年9月20日發行)。60版(初版は大正2年10月5日發行)。

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